宇佐美まこと氏の小説は初めて拝読します。
新聞の広告を目にして、面白そうだと思い借りてきました。
主人公は今年40歳になる、家具を作ることを生業としている、豊。
29年前、彼ら仲良し組だった小学生たちは、真夜中に、学校から盗み出した骨格標本を山に埋めるという悪戯をする。
しかし、30年近く経過したある日、豊は、実はあれは標本なのではなく、本物の人骨だったのではないかという危惧を抱く。
豊はかつての友人のもとを旅をしながら訪ね、ばらばらになったあの時の仲間の消息を手繰ってゆく。
彼らの中心人物であった少女は何か重大な秘密を抱えていたらしい。
隣人の殺害を黙認し、その骨を隠す手伝いを自分たちはさせられたのではないか……
疑いはもくもくと黒い雲のように胸に広がってゆく。
しかしその女の子はもう亡くなっていたと聞かされる。
あの日埋めた骨は本物の骨だったのか?
そしてそうだったとしたら、その骨は一体誰のものだったのか?
殺害犯人は誰なのか?
少女は誰を庇ったのか?
前半はあまり進展がなく、正直いって「かったるい」感じもします。
しかし、不思議と文章にリズムがあって、読むのをやめようとは思わせません。
この話ががぜん面白くなるのは、後半に突入してからです。
終わりの数十ページに、ここまで費やしてきた文章に隠された伏線が集約されていく様は大変読み応えがあり、見事です。
前半分の描写がやや冗長すぎるところがあるので、それを2割程度カットしていたら、もっとスピード感ある話になったのではないかなあという感じがしました。